シート巻き取り機の制御開発 ― レーザ径測定による張力一定制御と、あえてのタッチパネルレス設計
樹脂加工会社様 (樹脂・フィルム加工(リサイクル・リユース))
- 巻取制御
- 張力制御
- パウダブレーキ
- レーザセンサ
- インバータ

案件概要
- お客様:樹脂加工会社様
- 設備:フィルム原反ロールの巻き替えを行うシート巻き取り機(老朽化した既設装置の更新)
- 担当範囲:制御方式の検討、制御機器選定、制御盤設計・製作、PLCソフトウェア設計・開発、現地調整
背景と課題
回収したフィルム原反ロールから芯材を取り出して返却し、フィルムは別の芯材に巻き直す——リサイクル・リユースの現場で使われる巻き取り機の更新案件です。長年使われてきた既設装置の老朽化が進んだため、実績ある構成を踏襲しながら新しい装置に置き換えることになりました。
シンプルな装置に見えて、制御には巻取ならではの物理が潜んでいます。
- 張力を一定に保ちたい:巻き出しロールは巻き進むほど径が小さくなる。ブレーキトルクが一定のままだと「張力 F=トルク T÷半径 r」の関係により張力がどんどん強くなり、フィルムに負担がかかる
- 既設は手動調整頼み:巻き出し側のブレーキトルクも巻取速度もボリュームで手動設定。1時間ほどかかる巻き取り作業の間、状態を見ながらの調整が必要だった
- 操作はとにかくシンプルに:長年この装置を使ってきたベテラン作業者が使いやすいこと。タッチパネルはあえて採用せず、慣れ親しんだ押しボタンとボリュームの操作感を守る
対応内容

レーザ径測定による張力一定制御
巻き出しロールの外径をレーザ変位センサでリアルタイム測定し、「T=F×r」の関係に基づいて径に比例したトルク指令をパウダブレーキコントローラへ出力する構成としました。径が大きいうちはブレーキを強く、巻き進んで径が小さくなるにつれて弱く——PLCが自動で追従するため、作業中の手動トルク調整が不要になります。
調整のインターフェイスにも一工夫。トルク特性を「y=ax+b」の一次式で持たせ、傾き(ゲイン)は盤面のボリュームで、オフセットはPLC内部値で設定する方式としました。フィルムの種類や運転速度が変わっても、作業者は「ツマミひとつ」で特性を合わせられます。ボリュームの意味づけを「最大径時のトルク設定」と定義することで、直感に合う調整感になっています。
巻取完了の検知も同じレーザセンサを流用し、しきい値判定で自動停止。センサを1本追加しただけで、張力制御と完了検知の両方を実現しました。
必要十分な機器構成
- PLC:KEYENCE KV-N14DT+アナログ入出力ユニット KV-N3AM。小型PLC 2ユニットのミニマム構成
- 巻取側:三菱電機インバータによる速度制御(速度はボリューム設定)、非常停止はセーフティリレー経由でインバータSTOを直接遮断するハード安全回路
- 巻き出し側:パウダブレーキ+コントローラへのアナログトルク指令
- 操作系:運転入/切の押しボタン、異常表示灯、設定ボリューム2点。タッチパネルなし

「使う人」に合わせた設計
タッチパネルを載せれば設定項目も監視画面も自由に作れますが、この現場の正解は違いました。操作は従来と同じ押しボタンとボリューム。細かな調整パラメータ(センサ取付距離、完了検知しきい値、トルクオフセットなど)は試運転時にPLC内部で設定し、日常操作からは徹底的に隠す設計です。
一方で、将来のメンテナンス性は妥協していません。数値演算はスクリプト機能で記述して可読性を確保し、ラダーには設計意図が追えるよう行コメントを多めに残し、ブックマークで検索性も整備。「現場はシンプルに、中身は丁寧に」を徹底しました。
結果
- 巻き出し径の変化に自動追従する張力一定制御により、作業中の手動トルク調整から作業者を解放しました
- 操作系は従来の押しボタン+ボリュームを踏襲し、教育コストなしで新装置へ移行できました
- 小型PLC中心のミニマム構成で、老朽更新をコストを抑えて実現しました
大がかりなテンションコントローラを導入しなくても、センサ1本と小型PLC、そして物理の理解があれば張力制御はつくれます。装置の規模や現場の実情に合わせた「ちょうどいい制御」のご提案も、当社の得意分野です。