スパッタリング装置のクライオレス化 ― CT不使用モード × 粗引きドライポンプ化
金属熱処理・コーティング加工メーカー様 (金属熱処理・表面処理業(スパッタリングコーティング装置の設備改善))
- ドライポンプ
- 真空装置改造
- スパッタリング
- クライオポンプ
- コールドトラップポンプ
- 横河電機 FA-M3
- 省エネ

案件概要
- お客様:金属熱処理・コーティング加工メーカー様
- プロジェクト:スパッタリングコーティング装置のクライオレス化(コールドトラップ不使用モード追加)+粗引きポンプのドライポンプ化
- 対象:既設コーティング装置1基(横河電機製PLCと制御盤の改造)
- 担当範囲:改造設計(電気・制御)、制御盤ハード改造、PLCソフト改造、現地施工・自動排気試験・立会検収
背景と課題
そのコールドトラップ、実は無くても大丈夫かもしれません。真空装置の排気系に当たり前のように付いているコールドトラップ(CT)——低温面で水分を捕まえて排気を助ける装置ですが、そのために5.5kWのコンプレッサが運転中ずっと回り続けます。「本当に全部の工程で必要なのか?」を検証するには、まず「使わない」を安全に選べる仕組みが必要でした。
- CTのコンプレッサは連続運転が前提。電力も保守も、使っていない工程のぶんまで払い続けることになる
- ただ配線を外して止めると、CTのアンサバックや温度警報で装置が止まってしまう——「抜くなら制御ごと」が鉄則
- あわせて、油の管理が付いて回る粗引きの油回転ポンプもドライ化したい
- 操作インターフェイスのPCソフトは改造不可。実装はすべて制御盤とPLCの中だけで完結させる必要があった
対応内容
「CT使用/不使用」を、スイッチひとつに
盤面にセレクタスイッチを追加し、「不使用」を選ぶとCTへの制御出力を遮断し、制御入力(コンプレッサ運転アンサ・温度センサ・警報など)をまとめてスキップして工程が進むようにしました。CT本体や配管はそのまま——装置から「外す」のではなく「制御から抜く」アプローチです。不使用時はCTのブレーカを遮断しても構わない設計なので、コンプレッサを電源ごと止められます。自動運転の途中でセレクタを操作しても制御に支障はありません。PC側の操作画面には手を入れず、PLCロジックとスイッチだけで実装しています。

メリットとデメリットを、実測で確かめる
クライオレス化のトレードオフは正直に言うと「排気時間」です。当社が同種改造で実測した結果、ベース圧力到達までの排気時間の延長は概ね約30分程度。一方でメリットは、5.5kWコンプレッサの連続運転がまるごと不要になること——ランニングの電力と保守が一枚で消えます。肝心の品質への影響は、お客様の社内品質規格(膜厚・密着力・表面硬度)の確認で合格。「運用に支障なし」の評価をいただきました。成膜への影響がないことは、当社が実施した2件の装置でいずれも確認済みです。

ついでに、粗引きの油ともお別れ
同じ改造で、粗引きの油回転ポンプ(RP)もドライポンプ化しました。新設ドライポンプ(荏原製作所 EV-S30P)は既設RPとは別回路で増設し、盤面セレクタでRP/DRPを選択。既設RPは配線ごと温存したいつでも戻せる改造です。粗引き開始の瞬間の過負荷を防ぐため、省エネモード切替→遅延タイマ→粗引き弁オープン→タイマ→定常運転の段階シーケンスをPLCに実装し、ドライポンプ用の窒素バラスト弁もDRP運転中は常時開に。ハード改造は遮断器・セレクタスイッチ・リレーの追加とPLC入力4点・出力3点で完結です。

結果
- CT使用/不使用、RP/DRPがいずれもセレクタで選択式に。既設設備は温存してあり、いつでも従来運転に戻せる
- CT不使用運転により5.5kWコンプレッサの連続運転が不要に。排気時間+約30分のトレードオフも、成膜品質への影響なしも実測で確認済み
- 現地作業は休日1日:午前にハード改造、午後に単動試験から自動排気試験まで完了し、お立会いのもと検収。クライオレス化改造は本件を含め当社実績2件
「昔からそう付いているから」の設備を、数字で見直すお手伝いをします。真空装置のクライオレス化・ドライポンプ化・省エネ改造は、当社にご相談ください。