河川ゲート設備の制御PLC更新 ― 既設制御の解析からKV-8000へのリプレース、PC・クラウド連携まで
設備工事会社様(元請) (農業水利インフラ(河川ゲート設備))
- PLC更新
- キーエンス KV-8000
- EtherNet/IP
- 河川ゲート制御
- クラウド連携
- インフラ設備

案件概要
お客様:設備工事会社様(元請) 設備:国内某所の、河川から農業用水を取水するゲート設備(取水・土砂吐・洪水吐ゲート) 工事:農業水利施設の更新事業に伴う、ゲート制御PLCの更新(既設盤改造) 担当範囲:既設制御の解析、PLC構成・IO割付設計、PLCソフトウェア設計・開発、PC操作卓・クラウドシステムとの通信インターフェイス設計、現地試運転
背景と課題
長年稼働してきた河川ゲート設備で、制御の中核である富士電機製PLCと操作卓を更新する工事です。土砂吐ゲート・洪水吐ゲート・取水ゲート、計7門を制御する大規模な制御盤群を、既設のIO回路を流用しながらキーエンス KV-8000 へリプレースしました。
インフラ設備の更新ならではの難しさが詰まった案件でした。
「既設踏襲」が大原則:河川管理に直結する設備のため、水位・流量に応じたゲートの自動制御ロジックは既設と同等の動作が求められる。しかし既設PLCの中身を正確に知る資料は完成図書のみで、実機との差異も存在する 新旧インターフェイスの共存:操作卓は新設のPC操作卓(元請様所掌)に置き換わり、さらにクラウドシステムからの遠隔操作・監視という新しい要件が加わる 止められない設備:農業用水を供給し続けながらの更新工事のため、切替・試運転の段取りと確実な動作検証が不可欠
対応内容
既設制御の解析 ― 更新工事の土台づくり
最初に取り組んだのは、既設PLCの制御ロジックの解読です。完成図書(システム機能仕様書・展開接続図)の読み込みと現地調査を重ね、信号を1点ずつ突き合わせながら既設IOリストを作成。数ヶ月にわたり十数回の改訂を重ねて実機との差異を潰し込みました。
解析した自動制御ロジック(洪水・異常洪水・渇水それぞれの水位制御、取水流量制御)は「自動制御要約」として文書化し、発注者・元請様と共有。これが新PLCの設計仕様の土台となり、「既設踏襲」を検証可能なかたちで実現しました。

システム構成 ― 既設盤を活かしたリプレース
KV-8000 CPUを中核に、EtherNet/IPのリモートIO構成で既設の制御盤群(プロセス入出力盤・入出力中継装置盤)に分散配置。既設のリレー中継回路・計装回路を流用し、盤は新製ではなく既設改造としてコストと工期を抑えました。
PLC:キーエンス KV-8000 + Ethernetユニット(PC操作卓通信用) リモートIO:EtherNet/IP 4局構成、デジタル入出力 約300点・アナログ入力12ch・アナログ出力4ch 制御対象:取水ゲート4門・土砂吐ゲート2門・洪水吐ゲート1門
ゲート制御 ― 既設踏襲+新機能
解析結果に基づき、手動操作・開度制御・水位制御・流量制御の各モードを新PLCで再現しました。洪水・異常洪水・渇水といった河川状態ごとの自動制御、取水ゲートの急閉シーケンス、微開閉操作、停電時(UPSバックアップ運転中)の安全側制御まで、運用に関わる細部を仕様化しています。

PC操作卓との通信インターフェイス設計
新設のPC操作卓(アプリケーションは元請様所掌)との通信は、PLC側の通信仕様・デバイスマップを当社が設計しました。
周期別のデバイスマップ:毎秒(現在値・状態)/毎時(積算・日報データ)/毎日(最大値・最小値)と、データの性格ごとに領域を分離した読み出し設計 信頼性の担保:相互ウォッチドッグによる通信監視、NTPによる時刻同期で定周期データの整合性を確保 日報演算のPLC側実装:取水流量・放流量の積算、アナログ値の日次最大・最小演算をPLC側で処理し、上位はデータを読むだけのシンプルな構成に
クラウドシステムとの連携
クラウド(アプリケーションは元請様所掌)からの遠隔監視・操作にも対応しました。取水ゲートの強制全閉、取水流量目標値の遠隔変更をハンドシェイク方式で確実に処理し、PC操作卓からの操作とは「後操作優先」で整合を取る排他設計としています。河川の制御状態(洪水・異常洪水の発生/復帰)のクラウド通知出力も、実際の制御ロジックに合わせて追加しました。
新機能 ― 更新ならではの付加価値
放流量の演算化:流量計を新設せず、上下流水位からマニング公式により放流量を演算。計器コストをかけずに計測項目を追加 移動平均処理:全アナログ入力と演算値に対する移動平均の回数を、PC操作卓から個別に設定可能に 計装異常の検出:AD入力の断線・過電圧を判定し、上位系に異常値として通知 運転記録機能:KV-8000の運転記録(ドライブレコーダ)機能を常時有効化。「何か起きた」後にPC画面のスイッチを押すと、直前までの全信号・プログラム状態を遡ってSDカードに保存。インフラ設備のトラブル解析力を大きく高めました
結果
既設の富士電機製PLCによる7門のゲート制御を、既設盤・IO回路を活かしながらKV-8000へ更新し、現地試運転を経て引き渡しました 資料が限られる中でも、信号突き合わせと制御解析の積み重ねにより「既設踏襲」を検証可能なかたちで実現しました PC操作卓・クラウドという新しいインターフェイスへの接続と、運転記録・放流量演算などの新機能により、更新前より運用性・保守性の高い設備になりました
既設設備の解析から仕様化、PLCソフト開発、上位・クラウド連携、現地調整まで――メーカー完成図書だけでは進まないインフラ更新案件を、一貫して支える体制が当社の強みです。