薬液充填装置の大規模制御をフルSTで開発 ― IEC 61131-3準拠・約21万ステップのシーケンス制御
装置メーカー様 (化学品製造(薬液充填設備))
- PLC
- タッチパネル
- 三菱電機
- 重量計測
- リーク検査
- 防爆エリア設備
- Modbus TCP
- ST言語
- IEC 61131-3
- PLCOpen
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案件概要
- お客様:装置メーカー様
- エンドユーザー:化学品メーカー様(薬液充填設備)
- 装置:薬液充填装置(装置本体は防爆エリアに設置、制御盤は非防爆エリアに設置)
- 担当範囲:制御仕様の策定、PLC・タッチパネルのソフトウェア設計・開発、現地調整
背景と課題
高純度の薬液を容器へ充填する装置の新規導入案件です。真空引き・パージ・リーク検査・充填・洗浄という多数の工程を、容器サイズや洗浄ポートの有無に応じた3つの運転パターンで正確に繰り返す必要があり、制御ソフトウェアとしては非常に規模の大きい案件となりました。
- 制御シーケンスの規模:自動運転のフローチャートは仕様書ベースで170ページ超。3パターン合計で100を超える工程ステップを管理
- タッチパネルの高度な操作要件:誤操作防止の長押し操作、パターン選択の排他制御、バルブ操作フリーモード、工程スキップなど、運用に踏み込んだ細かな要望
- 記録・トレーサビリティ:警報履歴や工程実績、計測値のロギングと、CSVファイルとしての保存・取り出し
- 保守性:仕様変更・現地調整が続く前提で、変更に強いプログラム構造が必須

対応内容
システム構成
三菱電機 iQ-RシリーズPLC(R32CPU)と12型タッチパネルを中核に、デジタル入出力とアナログ入力で装置を制御する構成です。上位システムとはModbus TCP(Ethernet)で連携し、重量・圧力などの計測値や運転状態を上位側から参照できます。
- 計測系:ロードセル2式による重量計測、絶対圧計・圧力計による真空/圧力監視
- 操作系:電磁弁数十点のシーケンス制御とタッチパネルからの手動操作
- 上位連携:Modbus TCPスレーブとして計測値・状態信号を公開
IEC 61131-3準拠・フルSTによるプログラム開発
本案件のPLCプログラムは、IEC 61131-3に準拠しPLCopenの考え方に沿った設計とし、全面的にST(ストラクチャードテキスト)言語で開発しました。
- 構造体・FB(ファンクションブロック)・FUN(ファンクション)を駆使した部品化設計。工程ステップの制御ロジックを共通FBに集約し、100を超える工程を統一された構造で実装
- 各工程は状態遷移(ステップ管理)方式で記述し、フローチャートとコードが1対1で対応する見通しの良い構造に
- プログラム規模は約21万ステップ。ラダー中心の従来型開発では管理が困難な規模を、STによる構造化設計で保守性を確保しました
大規模でも「どこに何が書いてあるか分かる」プログラムにすることが、後述の度重なる仕様変更への即応につながっています。
自動運転シーケンス
容器の取り付けからリーク検査、パージ、充填、洗浄、取り外しまでを、工程番号で管理するステップ式シーケンスとして実装しました。
- 3つの運転パターン(容器サイズ・洗浄ポート有無)をタッチパネルから排他選択
- 工程スキップ機能:段取りやリカバリの際に、条件を満たした工程から途中開始が可能
- パージ方式の選択:サイクルパージとフローパージを工程条件に応じて切り替え
- 充填量はロードセルの重量差分で判定し、リーク検査は真空引き後の圧力上昇からリークレートを演算して自動判定
作り込んだHMI(タッチパネル)
「現場でどう使うか」に踏み込んだ、細かな操作仕様を実装しています。
- 誤操作防止:運転開始・停止やパターン選択は0.5秒長押しのオルタネイト動作、選択項目は排他制御
- バルブ操作フリーモード:メンテナンス時にインターロックを一括解除して個別操作できる保守機能
- 運転監視:配管フロー画面でのバルブ・計測値のリアルタイム表示、工程表示器、確認メッセージのガイダンス表示
- トレンドグラフ:圧力・重量を1秒周期でロギングし、画面上でトレンド確認
警報・ロギング・CSV保存
- 運転停止を伴う「重故障」と通知にとどめる「軽故障」を区分し、200点を超える警報を整理。警報ごとのインターロック連動、個別のインターロック解除まで設計
- 警報の発生・復旧履歴、工程実績、計測値をロギングし、CSVファイルとしてSDカードへ保存できる仕組みを実装。品質記録やトラブル解析にそのまま活用できます
設定値のパラメータ化
各工程の判定圧力・タイマ・充填量などをすべてパラメータコードで体系化し、タッチパネルから変更可能としました。試運転段階では仕様変更が30回近く繰り返されましたが、判定値の変更はプログラム修正なしで対応でき、構造化されたSTプログラムと合わせて、変更への即応性を実現しています。
結果
- 100を超える工程ステップ・警報200点超・約21万ステップという大規模制御を、フルST+構造化設計により高い保守性を保ったまま実装しました
- 容器取り付けから充填・洗浄・取り外しまでの自動化と、重量ベースの充填量管理・自動リーク検査により、充填品質と安全性を両立しました
- 度重なる仕様変更・現地調整にも、パラメータ化と部品化設計により迅速に追従しました
大規模なシーケンス制御を、IEC 61131-3準拠のモダンなPLC開発手法(フルST・構造体・FB/FUN)で作り切った事例です。ラダーが主流の国内FA分野において、規模と保守性が求められる案件でこそ、当社の設計力を発揮できます。