プレス稼働の見える化 ― PLC×データベース×Webアプリで自社開発した設備管理システム
精密プレス加工メーカー様 (金属プレス加工(設備稼働管理・見える化))
- 設備管理システム
- 稼働率
- Webアプリ開発
- Docker
- PostgreSQL
- GitHub
- 製造DX

案件概要
- お客様:精密プレス加工メーカー様(工場)
- プロジェクト:クリーンルーム内のプレス装置3台のショット数を収集し、稼働状況を社内のどのPCからもブラウザで確認できる設備管理システムの構築
- 担当範囲:システム設計・提案、データ管理盤(PLC+保守用タッチパネル)の設計製作、既設プレスPLCの信号追加改造、サーバ構築、データベース・Webアプリケーションの開発、現地設置・試運転
背景と課題
「プレスがどれだけ打てているか、事務所からリアルタイムに知りたい」——生産管理の原点のようなご要望です。プレスの実力は1分あたりのショット数(SPM)と稼働率に表れますが、従来は現場に行って装置を見るしかありませんでした。
要件を整理すると、既製パッケージが合わない案件でした。
- 見たいのはまずショット数と稼働率。大がかりなSCADAや生産管理パッケージは過剰で、ライセンス費用も運用負荷も見合わない
- 閲覧するのは社内のPC 20〜30台。専用ソフトのインストールやクライアントライセンスは避けたい
- 将来はプレス10台程度への増設や、ショット数以外のデータ収集にも広げたい
そこで当社は、PLC・サーバ・データベース・Webアプリケーションをすべて自社開発で一気通貫に構築する構成を提案しました。
対応内容

データの入口はFAの流儀で
プレス装置の上死点センサ信号から、既設PLCの小改造で1ショットごとのパルスを取り出し、新設のデータ管理盤(PLC)でカウント。1分ごとのショット数(SPM)と日次の積算値を演算し、サーバからの読出しに応えます。盤には保守用タッチパネルを設け、IOモニタ・異常履歴・時刻調整を装備。現場側の信頼性はPLCで担保する、当社の基本形です。
データの出口はITの流儀で
サーバはPLCを60秒周期でポーリングし、時刻付きでデータベースへロギング。その上にWebアプリケーションを実装しました。
- ブラウザだけで閲覧:社内LANのPCならインストール不要・クライアント数の追加費用なしで、20〜30台から同時アクセス
- ネットワーク分離:サーバにNICを2枚搭載し、設備側ネットワークと社内LANを物理的に分離。設備網に社内PCが直接触れない、セキュリティを考慮した構成です
- 社外からのアクセスは不可とし、閉域で完結

「現場で使われる」ための機能設計
- 日次ビュー:1分単位のショット数グラフ+設定値ライン、リアルタイム加算の積算ショット数
- 月次ビュー:日単位の実績をカレンダー感覚で俯瞰
- 稼働率は2種類:いま出せているかを見る「現在稼働率」と、期間の実力を見る「積算稼働率」に区分。目的の違う2つの数字を混ぜません
- 設定値は「後から直せる」:装置から自動取得できない設定値(目標SPM)は手動入力とし、入力間違いを前提に時刻範囲を指定して修正できる画面を用意。記録システムは、間違いをリカバリできてこそ使い続けられます
- CSVダウンロード:表示中のグラフデータをワンクリックで取得し、Excelでの分析や報告書作成へ
拡張を前提にした設計
管理対象は3台からのスタートですが、盤のIO・ソフトの構造とも累計10台程度への増設を見込んだ設計としました。ショット数以外のデータ取得への拡張余地も残しています。
WEB業界標準のプロジェクト推進
- ソースコードはGitHubで管理:バージョン管理と開発規約(使用ツール・バージョンの統制)を整備し、属人化しない開発体制に
- タスクはスプリントで運用:Azure Boardsを使ったアジャイル型の進行管理。仕様の育つWebアプリ開発に、ウォーターフォールではなく反復型で臨みました
- サーバ環境はDocker(docker compose)で構築:環境をコードとして再現できるため、開発機と本番機の差異トラブルを排除し、将来の移設・再構築・復旧も容易です
- データベースはPostgreSQL:実績あるオープンソースDBで、ライセンス費用なしに長期運用に耐える基盤を構築
ソフトウェアも「再現できる形」で残す
結果
- プレスの稼働状況が、現場に行かずとも社内のどのPCからもブラウザで見えるようになりました
- SPMと2種類の稼働率、CSV出力により、日々の生産管理と改善活動のデータ基盤ができました
- パッケージ製品に頼らない自社開発により、ライセンス費用ゼロ・現場要望への柔軟な作り込みを実現しました
PLCで確実にデータを取り、データベースに貯め、Webで見せる——本案件で確立したこの型は、その後の当社のロギング・遠隔監視・時刻同期といったIT×FA案件の土台になっています。「まずは1つの数字の見える化から」という小さな一歩も、将来の拡張まで見据えて設計します。