食品工場にビジョンセンサを「定着」させる ― 洗浄と共存する機構設計と、燕三条の黒染めによる反射防止カバー
食品メーカー様 (食品製造(外観検査・目視検査の合理化))
- 画像検査
- KEYENCE IV4
- 食品工場
- 洗浄対応設計
- 反射防止
- 黒染め
- 燕三条

案件概要
- お客様:食品メーカー様(工場)
- プロジェクト:揚げ物製品ラインの目視検査工程に、製品裏面の画像検査システムを導入。NG品の自動排出まで含めた合理化
- 担当範囲:センサメーカー帯同での現地事前試験、システム設計・提案、機構部(退避機構・遮光囲い・防滴カバー)の設計製作、制御盤製作、PLCソフト開発、反射防止カバー(黒染め)の製作手配、現地試運転
背景と課題
コンベヤで流れる製品の裏面を人が目視でチェックし、NG品を手で取り除く——この目視検査工程を、ビジョンセンサによる自動検査+自動排出に置き換えるプロジェクトです。
検査そのものはAI学習サーチの得意分野。しかし食品工場には、ビジョンセンサを「導入する」ことと「定着させる」ことの間に、特有の壁があります。
- 毎日の設備洗浄:食品ラインは定期洗浄が大前提。カメラが洗浄の邪魔になれば、現場に嫌われて使われなくなる。洗浄水からの保護も必須
- 油滴・製品残渣の飛沫:揚げ物ラインではレンズの汚れは「防ぐ」より「前提」。どう運用で回すかの設計が要る
- 照明の反射:天井照明の映り込みやフレーム反射は検査の大敵。一般産業なら樹脂フードや反射防止部材で逃げるが、食品工場では樹脂系の母材や細かい部品は異物混入リスクとして嫌われる
対応内容
まず現場で撮る ― センサメーカー帯同の事前試験
カタログ選定ではなく、センサメーカーと現地で事前試験を実施。ネット型コンベヤの下から裏面を撮像できるか、実製品で検証しました。この試験から「天井照明の映り込みには偏光フィルタが必須」「小型機より広視野・照明一体型が有利」「どこに置いてもレンズ汚れは避けられない」という設計の前提条件を掴み、要件に落とし込んでいます。

洗浄と共存する機構設計
- ワンタッチ退避機構:カメラユニットをスライドレールに搭載し、洗浄時は工具なしで退避。レールは洗浄液で潤滑切れを起こさないオイルレス仕様、位置決めはワンタッチかつ繰返し精度を確保し、戻せばそのまま検査を再開できます
- 防滴カバーと遮光囲い:退避位置ではステンレス製の防滴カバーでカメラを保護。検査位置はステンレスの遮光囲いで外乱光と飛沫を同時に低減
- 偏光フィルタを「洗える消耗品」に:レンズ汚れは避けられないという試験結果を受け、カメラ保護の役割を偏光フィルタに持たせ、予備を複数用意して1直ごとに交換・循環洗浄する運用を設計。汚れと戦わず、汚れを回す発想です
反射防止 × 食品適合 ― 燕の黒染め技術
遮光囲いの内面や金属カバーは、それ自体が照明を反射して検査を乱します。塗装は塗膜の剥がれが、樹脂部材は破損片が異物リスク。そこで当社が選んだのは、金属加工の集積地・燕三条の黒染め技術でした。
ステンレスのシンプルなカバーに黒染め処理を施すことで、内面反射を抑えた検査環境を実現。黒染めは化学反応で母材表面に四三酸化鉄の被膜(膜厚約1ミクロン)を作る技術で、塗装やメッキのような「上塗りの層」がなく、剥がれ落ちるものが存在しないため、食品工場の異物混入リスクを増やしません。寸法もほぼ変わらず、洗浄にも耐えます。
処理をお願いしたのは、燕三条で黒染め・パーカライジングを専門に手がける株式会社テーエム様(https://tm-tm.net/)。創業50年を超える鉄の黒染め技術に加え、全国的にも珍しいステンレスの黒染めを確立されており、食品まわりでの採用実績もある頼れる存在です。制御屋でありながら金属の表面処理にも通じ、地域のものづくりネットワークと組んで解決する——当社らしい設計になりました。

検査と排出、現場に合わせた細部
- KEYENCE IV4-600CA(アンプ内蔵・広視野カラー、照明一体型)+専用コントロールパネルで検査設定・品種切替
- ワーク有無センサと連動した定周期撮像で、裏面の白系・黒系の異常を検出。NG時は横行コンベヤの逆転で自動排出(既設ロボット制御盤へのハード接点挿入)
- 現場はロボット運転音が大きくイヤーマフ着用のため、警報ブザーは105dBの大音量タイプを選定。積層信号灯と合わせ、確実に気づける報知に
- NG画像は無線APを介して管理PCへFTP自動転送し、後からの傾向分析に活用
結果
- 人手に頼っていた裏面の目視検査を自動検査+自動排出に置き換え、検査工程を合理化しました
- 毎日の洗浄と共存できる退避機構・運用設計により、「現場で使い続けられる」検査システムとして定着しました
- 黒染めによる反射防止カバーは効果が認められ、別ラインの検査カメラにも同仕様で展開されています
ビジョンセンサは、置けば動くものではありません。洗浄・汚れ・反射・異物リスク——食品現場の制約を機構と運用まで含めて設計できるか。そして時には、金属表面処理のような隣の分野の引き出しが決め手になります。食品工場の検査自動化は、当社にご相談ください。